ドラマと映画の時間

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25.Netflixドラマ:三体レビュー

今回はNetflixで配信されているドラマの三体のレビューとなります。

 

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前々回、前回にわたって三体の事を紹介してきましたが、今回のレビューで最後です。2つの記事を読んだ上でこのレビューを読んでいただければな、と思います。

またネタバレは極力避けるし、本編のストーリーにはなるべく触れないようにしてレビューはするつもりです。

このレビューは小説との比較して書きます。小説を読んだことがなく、ドラマがとても面白かったという方はかなり面白味を削いでしまう可能性が高いです。

 

できれば小説とドラマとの違いに興味ある方だけおススメします。

 

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まず予告編からレビューするとw、音楽でレディオヘッドのeverything in its right placeという曲の合唱バージョンが使われています。 

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この三体はオックスフォードの5人組が主要クラスという事で、同じオックスフォード出身のレディオヘッドの曲が使われていると推察します。

そしてこの曲はKID Aというアルバムに入っていますが、レディオヘッドは前作のアルバムでバンドサウンド、ギター、ベース、ドラムというサウンドで音楽を作る事に飽き飽きして、KID Aではほとんどバンドサウンドで作られずに電子音楽にてアルバムが作られています。

つまり古いサウンドを捨てて新たな態勢で音楽を創造する、三体もこれは他のSF作品とは違って新たなSF作品である、という事でこの楽曲を使用したのだと思います。

 

実際にはシーズン1では使われていません。いまだに発表されてませんが、作られるならばシーズン2以降に確実に使われると思います。カーマポリスという曲、KID Aの前作にあたるアルバムに収録されてる曲は使われてます。

 

レディオヘッドの曲が流れる予告編はこちら🔽🔽🔽

 

https://youtu.be/dMAnHKc8B3s?si=93YL-Opis2jKSY_W

 

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ここからは本編ドラマのレビューとなります。果たしてNetflix版の三体はたった8話でどこまで描くのか?というのが期待と不安でいっぱいでしたが、本当に驚きました。ここまでまとめ上げてくるとは思ってもみなかったです。

さすがといえばさすがですが、同時に首をひねってしまうところも多々あったかなと思います。

 

なるほどと感嘆し、さすがだなと思ったのは小説の第一部と最終章の第三部を同時に描いていた事。

確かに同時代に行われていたので、これを同時並行でストーリーが進むのには感心したし、最大に良かった点だと思います。

 

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やっぱり同時並行でストーリーが進むとはいえ、最大の驚きはトマスウェイドが登場してきた事ですね。第三部の重要なキーパーソンがいきなり出てきた時は、それもダーシーが部下にいる事は、最初は頭を抱えて大丈夫か?このドラマ、ホントに大丈夫か?と心配しました。

 

そのトマスウェイド演じるリーアムカニンガムはゲームオブスローンズのダヴォスという役を演じています。ゲームオブスローンズの記事を書きましたが実は七人の侍に影響されており、ダヴォスは七人の侍で重要な役をやっている志村喬/しむらたかしをモチーフにしてる事がわかります。

七人のサムライでの志村喬は腕の立つサムライを探して、盗賊と戦うために戦略を立てる役でした。

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今回のウェイドはどうでしようか?D.Dコンビは今回もリーアムカニンガムに志村喬的ポジションを与えている事がわかります。優秀な人材を探して戦略を立てる。盗賊が宇宙人になって襲ってくるというストーリーに変わっただけですね笑。

なぜリーアムカニンガムがウェイドを演じるか、この事を知ってるのは日本では俺とこれを読んでいる人くらいじゃないかな。

世界でもそんなにいないと思います。それを思うとちょっと嬉しい笑。

 

ゲームオブスローンズの記事はこちらです🔽🔽🔽

https://spiralout.hateblo.jp/entry/2023/05/16/214330

 

小説では中国が舞台のところが今回はイギリスが舞台であるという設定やオックスフォードの5人組という変更点も個人的には気になりませんでした。

小説は小説、ドラマはドラマであり、ゲームオブスローンズを手がけたD.D.コンビに求めるのは「忠実である事」ではないので、個人的には興味深くまた斬新で面白いとは思いました。

 

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ただここから厳しく言及していくと、前々回の記事で書いた通り、Netflixのドラマ制作方針と三体ストーリーの質が噛み合っていないな、というのが見終わった後の実感でした。

科学的根拠があまりに解説されずにストーリーが進みすぎている。三体運動にせよ量子もつれにせよこの事が説明されるのと説明されないのとではドラマを理解する事、面白さの深みも半減してしまうところがあります。

その科学的根拠をストーリーで解説されないのもNetflixのドラマは打ち切りが多く、ただでさえ三体の第一部はどうしても重たくゆっくりなペースだから、省ける/はぶけるところは省き、前へ前へテンポよく進めて行かないと打ち切りになりかねない、という事実が透けてみえるような気もしました。

ここでドラマもしくは小説を読んでる方に三体の物理に関して、簡潔かつ詳しく解説してる方のご紹介をしたいと思います。

「このこねこの1日一冊本紹介」というチャンネルです。1日一冊本を紹介してる読書家のチャンネルですが、この方は私以上の筋金入りの三体ファンで、物理にも明るい上に、三体のような本を待っていたんだ!!というような熱意と物理に対しての情熱が溢れていて、ストーリーに沿って話をしてくれるのでとてもわかりやすいと思います。

他にもたくさん三体の解説動画がありますが、とりあえずドラマしか見てない方はこちらの動画を見ると事足りるのでぜひご覧ください。🔽🔽🔽

 

https://www.youtube.com/live/4BLUfVvsdwE?si=0OaaIeY81H2yzWPz

 

話を戻してもう一つ気になったのはジンチェンの存在です。

 

 

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これは小説版では最終章であるチェンシンがモチーフになっています。舞台が中国ではなく、重要キャストも多様性を意識したキャストにも賛成なのですが、気をつけなければいけないのは、アジアの文化をヨーロッパやアメリカ人にわかりやすく変換してしまう事だけは注意しなければいけない。言うなら日本を舞台にしたハリウッド映画でちゃんと日本の事を描いた作品はないという点があります。とにかくスシ、新幹線、ニンジャ、ヤクザに刀を振るわせればジャパンだ、と描いているドラマや映画が多いと思います。

これがコメディ映画なら好きな人は見れば良いとなるけど、このドラマはそのコメディドラマではありません。

多様性というのは、キャストが様々な人種が出ていれば良いというわけではない。その地に根差した文化を西洋の人間にもわかりやすく伝える事でもありません。

 

ジンチェン/チェンシンはかなりアジア的な思想/概念を体現してる女性だと小説を読んで感じました。ここで違うドラマで例えるならば、ジンチェンは現在ディズニープラスで配信されている大人気ドラマ、将軍/SHOGUNの穂志もえか演じる藤がかなり近い存在と言えます。

 

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穂志もえか演じる藤は、不遇の姫君です。ある時、敵対するサムライ達が庭先にドカドカと押し入ります。その時に藤は怒り狂って怒鳴るわけでもなく、銃をを向けて静かに一喝して屋敷から出ていきなさい、と言ってサムライ達を追い払います。

 

ある意味で物のように扱われる女性と、三体生命体がきたら虐殺か奴隷しかない境遇が似ているし、それに対して静かに向き合う藤とチェンシンの姿が重なりました。

 

太極拳や剣術では強さを水に例える事があります。水の流れのようにしなやかである事、水をイメージして瞑想したり、そういう概念/思想が漫画をはじめ生活圏にまで影響を及ぼしています。

藤にもチェンシンにもそのしなやかさと水の一滴のような「純」さを感じさせる役です。

 

そしてその水の一滴/水滴そのものが一つの強さの象徴として三体では描かれるところがあります。

 

Netflix版三体のジンチェンにははっきり言ってそのような印象は全く見受けられませんでした。言うならばハリウッド映画/ドラマによくある「戦う女性」になっていて、それは白人でも黒人でもできる事だし、中国人の書いた小説だからアジア系の人がキャストされただけでないか、仮にこれがヨーロッパやアメリカの作家が書いた本ならば、主要キャストにアジア系の人が選ばれただろうか?と猜疑連鎖/サイギレンサを生んでしまう事になってくる。

 

徹底したリアル志向のドラマ、将軍の存在

 

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上記に示した将軍/shogunというドラマですが、第一話は900万回の再生記録叩き出し、ディズニープラスの歴代一位を記録してます。とは言ってもディズニープラス自体はできてから月日がそんなに経ってませんから、歴代一位といってもそんなにピンとはきませんが、それでもスターウォーズ、マーベルシリーズを有する中でその人気ドラマを抑えて一位というのは驚くべき事です。

 

フィクションであるにも関わらず、関ヶ原前夜の政治闘争に揺れ動く様は、とてもリアルで惹きこまれながら見ています。

正直、2024年3月の話題ドラマは売り上げ部数3000万部は超えたであろう三体だろうと私だけでなく、世界中が予想していたと思うのですが、ロッテントマトの批評家、視聴者支持率にしても話題性にしても三体よりも将軍の方が上なのは間違いない。

 

中世の政治的闘争と人間群像劇、世俗の雰囲気、そして臭い/におい以外は全て映す事を心がけているかのような戦いの残酷シーンと性描写に、D.Dコンビの手がけたゲームオブスローンズを重ねる人は世界中に多くいると思います。また将軍というドラマを手がけているスタッフもゲームオブスローンズをかなり意識してるのは間違いないでしょう。

 

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はっきり言って内容といい、この当時の社会システムやサムライという特権階級にしても西洋の人々はほとんど理解できないと思います。

それだけではなく、将軍ではほぼ全編にわたって日本語で日本人以外は字幕で見る事になります。それでもお構いなしに、理解されずとも知った事ではないと言わんばかりに徹底的にリアルな政治闘争と人間群像劇にこだわっている。これはとても驚異的な事です。

 

今までは全編字幕のドラマは海外ではヒットしないと言われていたけど、多くの人々が惹きつけられている。

あのドラマを見た後に三体を見ると、やはりアジアの文化を西洋の人にもわかりやすくしすぎてはいないか、と思ってしまう。

 

VRの中国の歴史でも英語の会話だし、小説ではおそらくキルビルに出演していた栗山千明をイメージしていた智子が、違うタイプの女性になっている。

 

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違うタイプの女性でもドラマと小説では違うのでそれを受け入れたとしても、あのマトリックスとニンジャをイメージした服装には個人的にはちょっとゲンナリしてしまいました。

将軍のように理解できなくとも英語圏に寄せすぎずにこだわりをもってやって欲しかったというのが本音です。

ただこれもD.DコンビがそうさせたというよりもNetflixのドラマ制作方針がそうだから、それに沿って作った、というのが本当のところなのかもな、と勘繰ってしまいます。

こういう事をもう言わないためにこれを最後にしたいのですが笑、やっぱりHBO型のドラマというか、歴史ドラマで屈指の名作、カエサルを主人公としたローマのように、あるいはゲームオブスローンズのように、テンポは遅くともしっかり描いたHBOとD.Dコンビが再びタッグを組んで作ってもらいたかった、と思ってしまう。

 

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それでも三体を見るべき理由

 

かなりマイナス要因を書いてきましたが、それでも三体はぜひ見てもらいたいですし、小説も読んでもらいたいと思っています。

D.Dコンビの気になる発言として、シーズン4までやりたいという事を言っていたらしいのですが、正直このペースでいったらシーズン3で終わる予定なのだろうと感じていました。シーズン4までやるならば、おそらくドラマオリジナルのストーリー展開をする事が予想されます。もしそうならば俄然、期待が高まる。

 

まぁ原作に猛烈に入れ込みすぎのアホなヤツと言われれば本当にその通りなので笑、狂信的なファンの妄想くらいで読んでもらうくらいがちょうど良いのかも知れません。

 

でも前の記事で指摘した通り、この三体は人間に多くの事を教えてくれる物語です。

 

一つの命は、宇宙の広さよりも大きい。

 

本でこの真実を深く語られ始めるのは第二章の黒暗森林から、ドラマではこれからです。そして人類の歴史を俯瞰してみると、人類の発展はこれからかも知れない。

 

私は北海道に住んでいますが、100年前に東京あるいは九州にいくのは困難な事でした。交通手段が未発達だったからです。

今では多くの人が東京おろか海外にまで行けるようになった。

昔にタイムスリップしてその生活をしてみたら窮屈/きゅうくつに感じる事でしょう。

 

では遠い遠い未来はどうでしょうか?

 

おそらく多くの人々はスターウォーズのように、未来は様々な惑星に人間が住み着いていて、そして自由に宇宙を航行してる姿を思い浮かべる姿はさほど困難な事ではないと思います。

 

自由に宇宙を航行できて色々な星に住む事が実現していたら、未来の人間はかつて地球という一つの星で暮らしていたという事実に窮屈に思う事でしょう。

そんな未来の人々はこう思うと思います。

 

かつて人間は地球という星で自給自足の生活をしていた。

 

この一言で地球の歴史は片付けられる。

人類はある意味で村からまだ外に出ていない状況ともいえます。その村の中で上を見ずに絶えず争いあっている状態といえる。

広大な宇宙の歴史で見ると、砂粒にも満たないこの青い星の歴史は、人類はまだ幼年期にもまださしかかっていないかも知れない。

 

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この三体というドラマ、あるいは小説を通じて、ぜひその事を実感していただければ、と思います。

 

人類はもっと遠くへ行ける。

 

 

 

Netflix版ドラマ、三体

星5つに対して

個人的満足度:🌟🌟🌟

オススメ度:🌟🌟🌟🌟🌟