ドラマと映画の時間

U-NEXT、Netflix、ディズニー、Amazon、Appleプラスのドラマ、映画の感想と紹介をしていきます。

24.小説三体の魅力

今回は全世界で2900万部以上のベストセラー小説で、Netflixでドラマ化された三体の魅力について書きたいと思います。

前の記事でもNetflixで三体が制作される事に対する率直な感想をきました。もしよろしければご覧ください。

 

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Netflixの三体とWOWOW、U-NEXTで配信されている三体は全く別物です。Netflixはゲームオブスローンズを作ったD.BワイスとデビットベネオフのD.Dコンビが作った三体で、WOWOWとU-NEXTで配信されてる三体は中国のテンセントという会社が制作した三体です。

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まずはこのドラマを紹介する前に、全世界で2900万部以上のベストセラー小説について説明したいと思います。自分もこの三体という小説は読んでいてもうすでに3回ほど読み返していて、こよなく愛してる作品と言っていいし、三体マニアと言ってもいいかなと思います。

 

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この作品は宇宙とコンタクトをある中国人がとった事によってある事が起きて、地球だけでなく宇宙全体を巻き込む事象が起こるというストーリーです。

作者のリュウツーシンは多くのSF作品に影響を受けて、この三体ではその娯楽作品と哲学、そして物理学をベースにしてとてつもなく豊かで非情ではあるが、重厚な人間群像劇を描いた作品です。

私もとても魅了された1人ですが、この三体という作品にとって1番核となった、1番影響を受けた作品はおそらくロバートゼメキス監督、ジョディフォスター主演のコンタクトでしょう。

 

 

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三体が父と娘の話かと言われれば違いますが、父との死別という事が大きな影響をもたらすという点ではそうですし、宇宙生命体とコンタクトをとろうとする点もそうです。

また映画のコンタクトでは

ヴェガの星の生命体もまた何者かに導かれ、この宇宙は、、、というストーリーそのものが三体にとても影響を与えている事がわかります。

このあらすじを紹介しただけで本を読んだ方で死神永生まで読み終えた人ならば、わかってくれるのではないか、と思います。

 

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実際に電波で宇宙生命体とコンタクト取ろうと思っても電波は広がってもエネルギーは落ちますから、最も近い恒星の一つであるヴェガまで届く事はかなりの年月がかかるし、実際には電波をキャッチする事は人間の理解力では不可能ではないかと思います。

リュウツーシンも科学的にはなかなか難しいと感じつつ、それでもこの映画/原作小説に魅了され、なんとかさらに科学的な視点を取り入れながら壮大な物語にできないか、と三体ではある方法を使えば強力な電波となって発信できるというストーリーになっています。

そして実際に宇宙生命体とコンタクトをとれる事になったらどんな事が起きうるのか、という事を具体的に書かれていて、この本を読み終わった後ならば、宇宙生命体とコンタクトを取ろうとはなかなか思わないでしょうw。

 

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ちなみに星空の写真は私が撮りました。

 

三体は5冊の本編と2冊のスピンオフがあります。本来は第一部、2冊目3冊目の第二部の黒暗森林で終える予定だったらしいのですが、大好評でそれなら読者がついてこれなくてもいいから徹底的に書いてやろうとリュウツーシンがハードSFに特化したのが4冊目5冊目の第三部の死神永生/シシンエイセイとなっています。

 

 

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この死神永生では新たなSFを意識していると感じました。2001年宇宙の旅という映画やフランクハーバードのデューン砂の惑星、さらにアイザックアシモフのファンデーションシリーズが未来や宇宙そして人間とは何か?というテーマを根底に物語を紡いでいきます。

 

この古典的SF映画/小説をビッグバンとして、その影響を受けたスターウォーズスタートレック風の谷のナウシカガンダムという作品がビッグバンからさらに空間を拡げていったという事が言えると思います。

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その影響力は凄まじく、この一連のビッグバンが起きなかった世界は想像できませんし、少なくともスターウォーズガンダムといった作品は今もまだ作られているわけで、その経済効果たるや天文学的数字になるし、私達の生活圏内にもなにかしらの形で影響を受けたものがあるはずです。

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三体の死神永生では確実にその影響を受けつつもその空間を閉じて新たなる空間を創造し、その事を意識しながらストーリーが展開してるのがよくわかります。

奇しくもこの2024年3月、4月に公開されてる話題作といえば、ドゥニビルヌーヴ監督のDUNE part2

 

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クリストファーノーラン監督のオッペンハイマー

 

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が挙げられます。このドゥニビルヌーヴ、クリストファーノーラン両監督はSF映画を牽引してきた2人と言っていいと思います。色々な事がありながら、ようやく映像化された古典SF小説として有名なDUNE/砂の惑星、そしてApple TVプラスで配信されてるファンデーションの事を考えてみると、古典SFが映像化されつつそこに三体が映像化されるという事は、なんというタイミングなのだろうとちょっと興奮したりしてます。

 

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旧約から新約へ。時代のが大きく渦巻き、この三体が死神永生まで映像化されたら新たな空間はどんな拡がりをみせて、どんな物語が紡がれるのか楽しみです。

 

新たなる時代

 

様々なドラマ、映画を見るにあたって2020年代のドラマ/映画には大きな特徴があります。

それは主人公そのものが生きたいように生きるという事です。

1番わかりやすい例で言うならばNetflixのワンピースの実写版がそうです。

 

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主人公のルフィは村から出て海賊王なる事を夢に見ます。そして苦難におちいっているナミ、自ら村にとどまる事を課しているウソップやサンジと共に海に冒険に出ます。

それぞれ夢は違えど同じ船に乗って旅に出る。

 

自ら生きたいように生きる事がワンピースの大きなテーマである。

 

2020年代にはこのようなテーマを軸にしたドラマ/映画が量産されている傾向があります。では2010年代はどうだったかというと、それを詳しくやるとかなり長くなるので、必ず近いうちに特集をしたいと思います。

2020年代に入って主人公自らが生きたいように生きるドラマや映画を取り上げていきたいと思います。

 

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まずはゲームオブスローンズ特集記事で少し取り上げた黒澤明の生きるという作品をリメイクされたLIVING。黒澤明が作り上げたこの映画の時代は戦争の影響が色濃い時代でした。戦争に行った脚本家の橋本忍が、国に軍隊に忠誠を尽くして戦ったが、結果的に戦争責任をとったのはごくわずかな人間で、いったいなんだったのか?という事が発端になっている映画です。

国のためではなく、組織のためでなく、自分自身のやりたいように生きる。敗戦によって導かれたその考え方は、キリスト教/宗教の考えや、男は戦士として女性はその戦士に従う者として生きる事を余儀なくされたヨーロッパやアメリカでも静かであるが衝撃を与え、今なお変わらず生きる事を問うドラマや映画の基本的支柱になっています。

 

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続いては日本のドラマと映画から。こちらはディズニープラスのドラマ、ガンニバルです。このドラマは村に新たな警察官が来た事から始まりますが、この村には厳しい村の掟があり、その掟を凶暴な警察官が破っていくというドラマです。

村のしきたり、宗教的価値観からの解放、自ら人生を生きるその一歩は、この価値観と向き合わなければいけません。もちろんしきたりや宗教的価値観そのものを否定する気はないですし、その世界に生きる事が自由である事いう事はありますが、これも一つの時代の波でしょう。

 

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2020年代で個人的に最も素晴らしい映画だと思ったのがこの映画、ケイコ目を澄ませて、です。

障害者としてではなく女性としてでもなく、1人の人間として生きる事。

淡々と映像で流れていくストーリー、会話なくともそのミットに打ちつけるパンチの音で会話するかのような演出にとても力強さを感じました。

こちらも必ずレビューしたいと思います。

 

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HBOのドラマです。こちらもキリスト教の戒律ではいけない不倫をしてしまうドラマですが、その宗教的価値観に縛られた中での生きづらさを描いた悲劇的なドラマです。あまり面白くないと思われてしまうかも知らないけど、いずれこちらも詳しくレビューをしたいと思います。

 

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AppleTVプラスのドラマSILO/サイロというドラマです。

外界は放射能汚染で生きられない状態だという事で、人間はある巨大な塔/サイロの中で暮らしているという設定です。 正直そこまで惹きつけられませんでしたが、こちらも束縛からの解放という点ではわかりやすく、次のシーズンに期待しています。

 

このように束縛/呪縛、掟やしきたりあるいは性別からの解放というテーマが主題におかれた映画やドラマが作られていますが、それと同時に自分が生きる道、その自分とは何か?自己とは自己意識とは何か?という映画やドラマも同時に作られていて、その中でも代表的な例ではスペースマンという映画でレビューをした時に書いたビーフとeverything evrywhere all at onceという作品でしょう。

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性別、掟、戒律からの解放。自らの意志で選択し、生きる事。そしてその意志とは、自己とは何か?という問いとともに上記にあげた作品が作られました。

そして不思議とかつて影響を与えた古典SFが、DUNEやアシモフファウンデーションが映像化されるというのは、古典そのものが聖書化され新たな生き方が求められてきているかのような予感があります。

 

その代表的な例としてこの前スペースマンのレビューをしましたが、あれはまさにキリスト教のある神話とアジア的な概念がうまく混じりあった作品だったと個人的に思っていてとても高く評価しています。

 

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三体はどうか?何かを啓示できる作品か?答えはYESだと言いたい。大きな概念を、2001年宇宙の旅と同じようなインパクトを与える作品だと小説を読んで実感しています。

 

その概念は、一つの生命は宇宙の大きさよりも広い、という真実。

その真実を映像化されて、多くの人々が見てその真実を思考の一部として受け止めた時に、2001年宇宙の旅が大きなビックバンとして社会に世界に影響を与えた事を考えると、三体もまた社会に大きなインパクトを与える事になるのではないか、と思っています。

 


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かつて中国では文化革命という恐ろしい出来事がありました。推定二千万人もの人々が虐殺された出来事で、毛沢東が権力の座を奪われんとした際に打倒資本主義、真の共産主義を実現するために反勢力を処刑せよと、その活動は激化していくうちに西洋文化も道徳的/思想的に犯罪とみなして、アインシュタインからシェイクスピアまで、犯罪とみなして多くの人々が処刑されました。

 

その影響は色濃く、ハリウッド映画は今も全て中国では公開されていないのはご承知だと思いますが、特にSF作品は侮蔑の対象でした。ですからリュウツーシンの様なSF作家というのはおそらく常に西洋にかぶれた人間として扱われる事もあったろうし、辛い目にも数多く遭遇したと思います。

 

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そして世界中から中国のSFは無視され続けられてきた。

物理学そのものが文化革命で否定され、徹底的に焼け野原になり、その後もアインシュタインの事や西洋文化を公然と語る事もはばかられても諦めず、世界中からも無視されても虫ケラの様に扱われても、人は諦める事がなければ決して絶滅する事はないのだ、と世界に叩きつけたのが、この三体という小説です。

 

 

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グロいシーンもありますし、物理がわからないと理解できないところがありますが、ぜひ小説と共にドラマ見てもらいたいです。理解できなくとも詳しく解説されてるYouTubeがありますので、そちらも紹介したいと思います。

 

次回は三体の詳しいレビューをアップします。ぜひご覧ください。

 

スペースマンのレビューはこちら。

 

https://spiralout.hateblo.jp/entry/2024/04/08/145243