ドラマと映画の時間

U-NEXT、Netflix、ディズニー、Amazon、Appleプラスのドラマ、映画の感想と紹介をしていきます。

6.U-NEXT配信ドラマ カササギ殺人事件

今回はU-NEXTで配信されているカササギ殺人事件を紹介します。予告編はこちら⬇️⬇️⬇️

 

https://youtu.be/uviPytfoJAk

 

全6話で完結するドラマでミステリードラマです。殺人事件と聞けば人が惨殺される事件と思われる人もいると思いますが、そういう暴力描写はなく、名探偵ポワロやシャーロックホームズのような、往年のクラシックな推理ドラマを楽しむ内容になっています。

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実は推理小説がとても大好きでこの原作者のアンソニーホロビッツ推理小説カササギ殺人事件をはじめ6冊読んでいます。大好きな作家です。

 

カササギ殺人事件の小説を読んだ感想は正直本よりもドラマ向けかなぁと思いました。上下巻の2冊が刊行されてますが、アランが書いた小説と現実に起きた事件がリンクしており、上巻がアランが書いた小説の殺人事件を、下巻はアランは自殺したと推定された事に疑問を持った編集者のスーザンがアランの別荘に訪れ推理をしていくという内容です。

上巻のアランの書いた小説で名探偵が立ち向かう内容はずば抜けて面白く、あっという間に読み終わりましたが、下巻は自殺なのかと疑問を持つものの、でも殺人事件とも断定できず、推理ものらりくらりとペースが落ちるので、真剣に読まずにサラっと目を通すような感じで読了しました。

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ただつまらなかったわけではなくて、推理小説としての側面と同時にアンソニーホロビッツはこの小説を通して原点回帰しつつ、自戒の念もこめて推理小説の歴史を紐解くと同時に、作家とは何か?という事をストーリー上に盛り込んでいます。

それは推理小説をこよなく愛する自分にとっても考えさせられる内容でした。これから感想を書きますが、同時に推理小説を読まない人にもドラマをより理解できるために言及していきたいと思います。

 

小説でも作家アランは自分の周りにいる人を物語の登場人物にしてますが、あらためて現実の登場人物がアランの書いた謎のカササギ殺人事件の本の中でも役をこなしているのはとても面白かったです。

ある意味往年のクラシックなミステリードラマであると同時にそうでなければならない、という気骨さも感じました。

俳優のほとんどが1人2役こなしてる姿が見事でした。

探偵役のピュントを演じたティムマクマランは、相手の話を聞きながらもどこか遠くを見ているような演技がとても良かったです。

 

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そして今回の主人公の編集者スーザンを演じたレスリーマンヴィルの素晴らしい演技。見惚れてしまいましたね。キレもの編集者で自信家でさっそうと車に乗り込みこの物語をグイグイ引っ張っていきます。

小説のスーザンは確か40代で編集者としては優秀だけど、ドラマでのスーザンと違って私は編集者であって名探偵ではないという文があったように、そこまで自信家ではありませんでした。推理にも自信なさげですが、ドラマのスーザンはそうではありません。

疑問を持ったらどこへも行き、自信を持って推理していく。知的で有能で芯の強さをうかがえるレスリーマンヴィル演じるスーザンは本当に魅力的で好感が持てました。

 

ただ物語そのものはもう少しじっくり描いて欲しかったなーという風に思いました。駆け足で物語が過ぎていくので、ちょっと味わいにかけるという印象は本も読んだ人なら思う人は多いのではないでしょうか。

その一方で明らかに密集しないように、ある程度の距離を保って撮影をしてるなと感じました。コロナ禍の影響で距離を保ちながらの撮影で、ストーリー、演出、演技、全てにおいて影響を受けてかなり辛かったのではないかと思います。むしろ厳しい制限がある中でここまでの作品に仕上げたのは、本当に素晴らしいと感じました。

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まー肩組んだり顔と顔が近い写真ばかりアップしてますがw

ここからこの物語をより楽しく見るために推理小説の歴史、シャーロックホームズを例に紐解いていきます。このカササギ殺人事件とも関係はあるのでぜひ最後まで読んでいただければと思います。

 

名探偵シャーロックホームズ

 

日本でも何度となくホームズはドラマ化されてますし、ホームズはハンサムでジャーニーズ事務所のタレントさんがやるようなイメージがありますが、実際のホームズは青白く不気味な印象で、麻薬をこよなく愛する中毒者です。

記念すべき第一回目はある女性から写真を奪うというストーリーですが、見事に完敗します。でも依頼人から報酬を受ける事になるのですが、ホームズは金はいらないから彼女の写真が欲しい、という内容なんですね。それからホームズにはラヴロマンスと言えるロマンスはありません。

 

なんだったら相棒のワトソンとできていて、男色好きであるという事もほのめかされたりします。

ホームズはロバート・ダウニー・Jr主演で映画化されてますが、ロバート・ダウニー・Jrは一時期麻薬中毒者でした。

ワトソン役もなかなか美的ですね。つまりそういう事なんです。

 

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ホームズはある事件で犯人と共に崖から落ちて死にます。でも人気作として復活するのですが、コナンドイルは実は推理小説を書くよりも、歴史小説を書きたかったんですね。イギリスは香港やインドを植民地化していたから、異国情緒あふれる作品が当時は沢山ありました。もちろん、植民地化は酷い話ですが。

でもホームズが爆発的にヒットしたためにそれを書く事ができず、くすぶってもいたというか。

 

そしてホームズの物語設定として麻薬中毒者であるとか、物語を語る上で大事なラヴロマンスの要素を書かないだとか、挙句の他に男色をほのめかすというのは、当時のキリスト教を信奉するヨーロッパでは下手したら殺されかねない状況なので、読者を逆撫でする設定と言っていい。

ホームズの設定そのものにやる気がなかったあらわれと言われています。でも裏腹にホームズは大ヒットしてしまった。コナンドイルはだからホームズを崖から落として死ぬという内容を考えるんですね。

この推理小説を世に広める起爆剤となったホームズの歴史とコナンドイルの一生は、このカササギ殺人事件を見る時には知っておいた方がとても楽しめると思います。

 

推理/ミステリー小説は文学なのか、文学ではないのかという論争があります。推理小説は文章が下手でも最後のどんでん返しが良ければ、まずまずの評価を受けるけど、文章がとても上手く文学的であっても、トリックやどんでん返しがたいした事がなければ評価はされません。

推理小説が内包する構造そのものに問題があり、それで文学ではないと言われたりしています。

それがこのドラマでも大きなテーマの一つになっていますね。

個人的には文学でなくてもそれで良いと思ってますし、何もかも文学的ならば疲れるし、やはり3時間くらい暇な時間でサクッと読めるような推理小説はとても好きです。

消耗品というのは考えようによっては生活で1番使われるような物です。サクッと消えてしまうような物ほど大事な物ないかもしれない、とも思っています。

 

 

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原作者であり脚本家であるアンソニーホロビッツは、小説でここ最近は殺人事件のドラマが多すぎるのではないか、と物語で語らせています。自身もその推理小説を書く身分であるし、ドラマの中枢を担う脚本家でありながら何を今さらという感じも受けますが、あまりに猟奇殺人をテーマにしたものが多すぎるという事が言いたいのだと思いました。

 

殺人がいかに酷い方法で起きたかで読者、視聴者を喜ばせるのではなく、推理そのものを楽しむものだ。アンソニーホロビッツはそこに重きをおいている。だからこのカササギ殺人事件も残酷な描写もなく徹底的にクラシカルなミステリードラマとして制作されています。彼の長年に培われた哲学がしっかりと息づいている事がとても嬉しかった。

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この小説にもドラマでも森を開発ようとする話が出てきます。

森とは道がなく光もそこまで差し込まない。それは人生そのものであるという事。同時に森は人や生物が生きていくには欠かせない恵みを与えてくれるという事実。それは天国というメタファーにもなりうる。

作家とは森の中でさまよい続け、恵みを見つけて文字に書き起こす事が仕事なのだ、という事を推理小説とは別にそのような隠れたメッセージを文字の森の中から見つけました。

 

ドラマを見終わった後に、名探偵ピュントがこの後どちらの方向に歩を進めてゆくのだろう、と想像しました。

このドラマは、ミステリードラマを見た事がない人でも楽しめる内容になっていると感じます。もうすでにこの続編が制作が決まっているという事です。

 

またレスリーマンヴィル扮するスーザンが活躍する姿が見れるのはとても嬉しいし、ぜひシリーズ化していってもらいたいと思います。

 

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最後にこのドラマを気に入った方でアンソニーホロビッツの作品を読みたいという方がいらしたら、メインテーマは殺人と殺しのラインをオススメします。

あとやはりアガサクリスティーそして誰もいなくなった、とオリエント急行の殺人は世界中のミステリー小説が好きな人や文学が好きな人でも幅広く支持されている作品なのでオススメします。

 

ディズニーの映画でもオリエント急行の殺人とナイル川殺人事件はありますが、、、まぁ、ディズニーの意向にそった内容であって、アガサクリスティーの意向にそった作品ではないという事はお伝えしておきますw。少なくともレビューする事はないでしょう。

 

ドラマ/カササギ殺人事件、星5つに対して

 

個人的満足度:🌟🌟🌟🌟

 

オススメ度:🌟🌟🌟🌟