前回の記事でアガサクリスティの小説、そして誰もいなくなったをベースにした映画、ザメニューを紹介しましたが、今回はそのそして誰もいなくなったをドラマ化した作品を紹介したいと思います。
2023年5月現在、AmazonプライムとU-NEXTで配信されています。1時間ドラマで全3話。
小説を読んでなくとも楽しめる作品になってます。ミステリー作品です。
そして誰もいなくなったは中学2年の時に読んでから少なくとも毎年読んでいておそらく20回は読んでいます。ちなみに45歳です。
この小説はほどよい文量で4時間くらいで読めるし、ほどよい文学性で重くもなくミステリアスに終わっていく様にとても惹かれます。
つまり軽くもなく重くもなく、しかし構成がキッチリとして見事なのに文章は流麗で、読み終わった後はアガサ独特の余韻に浸れて最も読んでいる本です。
このアガサクリスティは女性作家としてはジェーンオースティン以降有名な女性作家であり、その草分け的存在であると共にこのようなミステリー作品のみならず、小説においても映画においてもかなり影響を与えた人物です。
ドラマの多くは殺人がからむものが多く、一週間で地上波テレビや動画配信で見るドラマでは相当なものを自然に見ていると思います。
その多くがアガサクリスティやコナンドイルが書いた小説家から始まったと思うと、とんでもない影響力だという事がわかると思います。そのなかでもこの小説、そして誰もいなくなったは、ミステリー作品としては最も有名な作品です。ぜひその原点を見てもらいたいと思っています。
この作品は小説と殺害方法も違うし、ラストも違います。ここで切るのかと驚いたけど、むしろミステリーの部分が強調されてこれはこれでとても良かった。
このドラマはサイコスリラーの側面を強く出していました。と言ってもBBCの制作ですからその手のサイコものが好きな人は肩透かしくらうかもしれません。
アガサクリスティの好きな人は多くいると思います。その中でもそして誰もいなくなったという小説がとりわけ人気作品ですし、映像化するのを疑問視する人もいると思います。
この作品を見て思ったのは、あらためて映像作品と小説は別物で、互いにやる事があるという事でした。
大事なのは映像作品を見たら小説が読みたくなり、小説を読み終わったらこの映像作品を見て比較したくなるかどうかです。この点でこの映像化作品は成功した例になるのではないか、と思いました。
この作品はアガサクリスティの小説の空気感がとても漂っています。あの寒々とした雰囲気も、殺伐としながらも流麗で儚さが漂う空間が堪能できます。
やはり1番の肝は俳優たちの演技の掛け合いです。この俳優達の演技が実に素晴らしくアガサクリスティの独特の質感というか、それを体現している。
制作サイドも俳優陣もアガサクリスティに対して敬意と尊敬の念がとても感じられます。
やはりイギリスを代表する作家であり、とりわけこの作品は愛されている作品です。やはりその作品に携われる、そしてそのメインキャストに選ばれるというのは俳優にとってこの上ない名誉ですから、とても力が入っていると思います。まさにその俳優達の掛け合いによってこのドラマの品質は保たれていると言っていい。
ただ原作を読んでいないとわからない部分があるので一応、犯人の思惑があってなぜこんな事をしたかという理由があったので、この文章の最後に小説のラストの事はサラッと書きたいと思います。もちろん犯人は誰かという事は書きませんし、ドラマでのネタバレにはなりませんが、できれば鑑賞した上で読んでいただければと思います。
なぜあんなレコードが存在をしたのか、なぜ村の人々は来なかったのか、その設定は書きます。何も知りたくない人はここでやめてください。
英語でも読んでますが、アガサクリスティの場合は特に翻訳が素晴らしいです。
ドラマも音楽が素晴らしくアガサクリスティの小説にピッタリの音だと思いました。ただ全般的に音が鳴っていて、沈黙が恐怖を誘うような部分がなく、ラストの方で波の音を強調するだけでいいのに、音が常に鳴っていて残念に思いました。まぁそこくらいかな。減点は。
過去を振り返るところがどんな感じになるか心配だったのですが、サッと振り返りパッと現実に戻り淡々と進みながらジワジワと恐怖が近寄ってくるところを見せ場にしてるところがとても良かった。
紹介はここまでにしておきます。これ以上書くと魅力を損ないかねません。小説を読んでない方も楽しんでほしいのであらすじも書かない方がいいかなと思います。
このドラマとそして前の記事に書いたザメニューという映画を見ると、アガサクリスティが好きな人は、満ち足りた気分になるのではないでしょうか。少なくとも自分は満ちたりた気分になりました。
アガサクリスティに対して話し合える人間も周りにいないですし、この作品に対して話が合う人はもっといない。
まぁそんなに友達もいませんがw。ぜひこの2作品はアガサクリスティの魅力を知る上で見てもらいたい作品です。
そして誰もいなくなった星5つに対して
個人的満足度:🌟🌟🌟🌟
オススメ度:🌟🌟🌟🌟
ここからはこの小説を読んでない方は疑問に思う部分があると思うので、その疑問点を解消すべく少し書きたいと思います。
ドラマのネタバレになりかねないので、必ず一度鑑賞してからお読みください。
それではここから小説の事を書きたいと思います。
まずレコードについてはアマチュアの劇団が舞台に使うので録音したという設定になっています。
もう一つ、島になぜ村民が来なかったかというと、かつて所有していた人がアメリカ人で夜な夜なパーティなどをしていたために村民の間では訳の分からない事をやってるから寄り付かないという風になっていました。
そして今回はさまざまな職種の人々がこの孤島で一週間どんな生活をするか実験をするから、寄りつかないでくれ、と頼まれていたという事になっています。
犯人は殺害の順番と罪の重さの順番に行われていて、この手順も含めてある意味これも芸術であり、最初はこの完全犯罪を謎のままにしておこうと思ったが、やはり他の人にも自分の事を知っておいて欲しいという欲求が出てきて、瓶に全てを書き記した手紙を入れて海に流します。
それをひろった漁師がいて手紙を警察に渡して終わります。
ここからあくまで個人的な小説の感想ですが、真実を書いた手紙を瓶に入れて流す=人生という大海原で、真実の入った瓶を見つけられる確率はわずかだし、そこに書かれている事が必ずしも良い事ではないかもしれない、というところにアガサクリスティの精神性があってとても惹かれます。
前述に書いた通りドラマと小説とでは最終的に違う終わり方になるけど、本を読んだらドラマが見たくなる、ドラマが見たくなったら本を読みたくなる、そんな循環作用ができた稀有な作品だと思います。
本もドラマも遠い海の向こうの孤島であなたが来るのを待っています。ぜひ導かれるまま舟を漕いでください。
もちろん、真実の入った瓶が見つかるとは限りませんが。
そして必ずしも、、、。